IFERROR関数とIF関数の違いとは?エラー処理の使い分けを実務例でわかりやすく解説

Excelで数式を使っていると、思わぬエラーが表示されて困った経験はありませんか?

そんなときに活躍するのが、**「IFERROR関数」や「IF関数」などの“エラー回避用関数”**です。
どちらもエラーを避けたり、見た目を整えたりするのに便利な関数ですが、
実は「仕組み」や「処理のタイミング」が異なるため、使いどころに違いがあります。

たとえば…

  • すべてのエラーに一括対応したいときは IFERROR

  • 特定の条件だけで処理を分けたいときは IF関数

といったように、目的や状況に応じて使い分けることで、Excelの処理速度や安定性も向上します。

本記事では、IFERROR関数とIF関数の基本から違い・使い分けのポイント、
そして実務でよくある具体例まで、初心者にもわかりやすく解説します。

IFERROR関数とは?使い方と基本の書式

◆ IFERROR関数とは

IFERROR 関数は、数式の結果がエラーだった場合に、代わりの値を返す関数です。
たとえば、VLOOKUP で検索に失敗したときや、数値を 0 で割ったときなど、
本来であればエラーが表示されてしまう場面でも、**「見た目を整えて処理を続ける」**ことができます。


◆ 基本の書式

=IFERROR(数式, エラー時に表示する値)
  • 数式:通常の計算式(例:A1/B1VLOOKUP(...)

  • エラー時に表示する値#REF! などのエラーが出た場合に代わりに表示する内容


◆ 使用例1:0除算を防ぐ

=IFERROR(A1/B1, "")

→ B1が0のときは #DIV/0! ではなく「空白」を返す


◆ 使用例2:検索に失敗しても空欄もしくは任意の値にする

【エラーの際に空欄表示】

=IFERROR(VLOOKUP(D2, 顧客リスト, 2, FALSE), "")

【エラーの際に任意の値を指定する】

=IFERROR(VLOOKUP(D2, 顧客リスト, 2, FALSE), "該当なし")

→ 検索値が見つからなかったときに "該当なし" と表示される


◆ IFERRORで対応できる主なエラー

  • #N/A(検索値が見つからない)

  • #DIV/0!(ゼロ除算)

  • #REF!(無効な参照)

  • #VALUE!(データ型エラー)

  • #NAME?(関数名や名前の誤り)

など、ほぼすべてのエラーに対応可能

※エラーコードについて詳しくは以下の記事をご参考ください。

エクセルのエラー一覧と対処法まとめ|#N/A・#NAME?・#REF!などの意味をわかりやすく解説


◆ 注意点:数式は常に一度実行される

IFERROR は便利ですが、裏側では**「数式を一度実行 → エラーなら代替値へ」という処理**になっています。
つまり、たとえエラーだったとしても、処理負荷の高い関数(例:VLOOKUP, MATCHなど)は一度動くため、
大量のデータを扱うときにはやや重く感じることがあります。

IF関数による条件分岐でエラーを防ぐ方法

◆ IF関数とは?

IF 関数は、ある条件を満たすかどうかで処理を分けるための関数です。
特に、**「そもそもエラーになりそうな場面を先に判断して回避する」**用途で使われることが多く、
計算の前提条件を満たしていないときは、関数自体を実行させないようにできます。


◆ 基本の書式

=IF(条件, 条件を満たすときの値, 条件を満たさないときの値)
  • 条件:TRUE(真)か FALSE(偽)になる判定式

  • 値1:条件が TRUE の場合の結果

  • 値2:条件が FALSE の場合の結果


◆ 使用例1:0除算を事前に防ぐ

=IF(B1=0, "", A1/B1)

→ B1が0のときは空白を返し、0で割る式そのものを実行しない


◆ 使用例2:空白のときはMATCHを実行しない

=IF(A1="", "", MATCH(A1, T:T, 0))

→ A1が空白の場合は MATCH関数を評価せず、空白を返します。


◆ IF関数のメリット

  • 条件を満たすときだけ関数を実行できるため、余計な計算負荷を避けられる

  • MATCHやVLOOKUPなど、重い関数の処理回数を減らせる

  • 見た目だけでなく、パフォーマンス面でも有利


◆ 注意点

  • エラーの種類までは識別できない(#N/Aなのか#DIV/0!なのかなど)

  • 複雑な条件が増えると IF がネストして読みづらくなる
    ※Excelにおけるネストとは、関数の中で別の関数を使用することです。

  • 条件が合っていないと、逆に処理をスキップしてしまう恐れも


「エラーになる前に止める」スタイルがIF関数の強み。
条件が明確な場合は、IFERRORよりも効率よく制御できる場面が多くなります。

IFERRORとIFの違いと使い分けの考え方

IFERRORIF もエラー回避や表示制御に使える関数ですが、仕組み・処理の順序・得意な場面が異なります。
ここでは両者の違いを明確にし、どちらを使えばよいか迷ったときの判断基準を紹介します。


◆ 比較①:処理の流れが違う

項目 IF関数 IFERROR関数
処理のタイミング 先に条件を判定 → 式を実行するか決定 まず式を実行 → エラーなら代替値
無駄な計算 条件を満たさなければ式は実行されない 式が一度は実行される(重い場合に注意)
条件の柔軟性 条件を細かくコントロールできる エラーかどうかだけで判定

◆ 比較②:どんな場面に向いているか

シーン おすすめ関数 理由
計算式が重い(MATCHやVLOOKUP) IF 事前に回避できれば処理が速い
多様なエラーを一括で処理したい IFERROR 書式が簡単、すっきり書ける
条件が明確に決まっている IF 「空欄なら計算しない」などが簡単
細かいエラーの原因を特定したい IF + ISNA / ISERR エラーの種類を分岐できる
表示を整えたいだけ(見た目優先) IFERROR エラーを空欄や「—」にできる

◆ まとめ:使い分けのポイント

  • 事前に「エラーになる条件」が明確なら IF

  • 条件がわからない/柔軟に制御したいなら IFERROR

  • 場合によっては、両者を組み合わせて使うのも有効


次章では、実際の業務でよくある具体的な使い分け例をご紹介します。
「MATCH・除算・VLOOKUP」など、場面ごとの選び方がわかります!

実務での使い分け例【MATCH・VLOOKUP・除算など】

ここでは、実際の業務でよく使われる関数において、
**「IFでの事前回避」と「IFERRORでのエラー処理」**を比較しながら紹介します。
それぞれのパターンを把握しておけば、状況に応じた最適な書き方ができるようになります。


◆ MATCH関数:空白セルの事前チェック

IFを使った例(推奨)

=IF(A1="", "", MATCH(A1, T:T, 0))
  • A1が空白のときはMATCHを実行せず、空白を返す

  • 無駄な検索を避けるため、処理が軽くなる

IFERRORを使った例

=IFERROR(MATCH(A1, T:T, 0), "")
  • A1が空でもMATCHは一度実行される(やや重くなる)

  • 手軽に書きたいときに便利


◆ 除算(0で割る式)の回避

IFを使った例(推奨)

=IF(B1=0, "", A1/B1)
  • B1が0なら計算せず、空白を返す

  • #DIV/0!の発生を事前に防げる

IFERRORを使った例

=IFERROR(A1/B1, "")
  • B1が0だと #DIV/0! が出るが、それを空白に置き換える

  • 式は常に実行されるため、軽さは劣る


◆ VLOOKUP関数:検索失敗時の対応

IFNAを使った例(VLOOKUP特化)

=IFNA(VLOOKUP(A1, 顧客一覧, 2, FALSE), "未登録")
  • #N/A 専用。検索値が見つからなかったときだけ制御

IFERRORを使った例(すべてのエラーに対応)

=IFERROR(VLOOKUP(A1, 顧客一覧, 2, FALSE), "エラー")
  • #N/A だけでなく、範囲ミスや参照エラーにも対応可能


◆ 応用:関数の入れ子で使い分ける

=IF(A1="", "", IFERROR(VLOOKUP(A1, 顧客一覧, 2, FALSE), "未登録"))
  • 空白のときは計算しない

  • 値があるときは検索して、見つからなければ「未登録」

  • IFとIFERRORを併用することで、処理効率と柔軟性を両立


ポイントは「どこで分岐させるか」「重たい処理をどう制御するか」。
次章では、こうした知識をまとめて整理します。

まとめ|エラー処理を理解して使い分けよう

Excelでは、IFERRORIF のどちらもエラー回避や見た目の整備に役立つ便利な関数です。
しかし、それぞれの仕組みや使いどころを理解しておくことで、パフォーマンスや処理効率に大きな差が出ることもあります。


本記事のまとめ

  • IFERROR は「式を実行 → エラーなら処理を切り替える」

    • 手軽に使えて見た目の整備にも便利

    • ただし、処理は常に実行される点に注意

  • IF は「エラーになる条件を事前にチェックして回避」

    • 重い処理を事前に止めることができ、高速・軽量

    • 条件が明確な場面で特に効果的


実務での使い分けのコツ

状況 おすすめ
空白セルならスキップしたい IF
すべてのエラーを簡単に非表示にしたい IFERROR
特定のエラー(#N/A)だけ対応したい IFNA
処理が重い関数を複数回使う IF で無駄な処理を避ける
エラーでも強制的に表示を整えたい IFERROR(見た目優先)

大切なのは、「なぜエラーが起きるのか」を理解し、目的に合った方法で対応すること。
適切に使い分けることで、見やすく・速く・ミスの少ないExcelシートが実現できます。