Excelで回帰分析!予測式を作って未来のデータをかんたんに予測する方法

目次

はじめに

「この先どうなるか予測できたらいいのに…」と思ったことはありませんか?

たとえば、勉強時間が増えるとテストの点数はどれくらい上がるのか? 広告費を増やすと売上はどれくらい伸びるのか? そんな未来の数値を過去のデータから予測する方法が、「回帰分析(かいきぶんせき)」です。

難しそうに聞こえるかもしれませんが、実はExcelを使えば簡単な回帰分析がすぐにできるんです!

この記事では、統計初心者でも扱えるように、

  • 回帰分析とは何か?
  • Excelで回帰分析を行う手順
  • 予測式を作って未来の値を計算する方法

まで、やさしく解説していきます。

ぜひ一緒に、データの「予測力」を手に入れましょう!


回帰分析とは?|2つの数値の関係から未来を予測する

回帰分析とは、「2つの数値の関係性」をもとに将来の値を予測するための手法です。 たとえば、「勉強時間が長くなるとテストの点数は上がる?」「広告費を増やすと売上も伸びる?」といった関係を、数値のデータから読み取ることができます。

Excelでは、こうした関係性をグラフや数式の形で視覚化し、未来の値を計算することができます。

以下では、初心者でもわかりやすいように、回帰分析の基本的な考え方から解説していきます。

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回帰分析のイメージをつかもう

回帰分析では、まず「2つの変数(数値の項目)」の関係を調べます。

たとえば、以下のようなデータがあるとします:

勉強時間(時間) テストの点数
1 60
2 65
3 72
4 78
5 85

このように「勉強時間が増えると点数も増える」という傾向がある場合、 Excelでこのデータを散布図にすると、右上がりの点の並びになります。

ここで、点の並びに合うような**1本の直線(回帰直線)**を引くことで、 「この先の予測」をすることができるようになります。

たとえば、Excelで分析した結果、

点数 = 5 × 勉強時間 + 55

という予測式が得られたとしましょう。すると、勉強時間が6時間だったら:

5 × 6 + 55 = 85点

と予測できるのです。

このように、過去のデータから将来の値を見積もる式(予測式)を導くのが回帰分析の大きな特徴です。

予測の精度を確認する指標もある

回帰分析を使って予測式を作っても、「この式はどれくらい正確なの?」と気になることもありますよね。

そのときに確認するのが、**「決定係数(R²)」**という指標です。

  • R²(アール・スクエア)とは、予測の当てはまり具合を表す値で、0〜1の間の数値で表示されます。
  • 値が1に近いほど、元のデータにピッタリと当てはまっている=信頼性が高いと考えられます。

たとえば:

  • R² = 0.95 → とてもよく当てはまっている
  • R² = 0.30 → あまり当てはまっていない(予測式の精度は低め)

また、Excelの散布図に近似曲線(回帰直線)を追加することで:

  • グラフ上に数式(予測式)
  • R²の値(予測の精度)

の両方を簡単に表示することができます。

このように、ただ「直線を引く」だけでなく、「その予測は信頼できるのか?」まで判断できるのが回帰分析の魅力です。


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Excelで回帰分析をやってみよう|グラフで直線と数式を表示

散布図の作成手順

ここでは、先ほど紹介した「勉強時間とテストの点数」のデータを例に、Excelで回帰分析を行うための第一ステップ=散布図の作成を説明します。


データを入力する まずは以下のように、2列のデータをExcelに入力します。

A列:勉強時間(X) B列:テストの点数(Y)
1 60
2 65
3 72
4 78
5 85

データ範囲を選択する

  • A1:B6 の範囲(見出し+データ)を選びます

グラフを挿入する

  • [挿入]タブ → [グラフ]グループ → [散布図(マーカーのみ)] を選択

これで、X軸に勉強時間、Y軸に点数をとった**点の散らばり(散布図)**が表示されます。

グラフができたら、次は「近似曲線(回帰直線)」を追加して、数式と予測の精度(R²)を表示していきましょう!

近似曲線(回帰直線)を追加

散布図ができたら、そこに「回帰直線(近似曲線)」を追加して、 予測式(回帰式)と決定係数(R²)を表示するステップに進みましょう。


グラフ上のデータ点を右クリック

  • グラフの中にある点(マーカー)を右クリック
  • 表示されたメニューから「近似曲線の追加」を選びます


近似曲線の種類を選ぶ(線形)

  • 「線形近似」にチェックが入っていることを確認します
  • 必要に応じて線の色や太さを変更できます

    ※線の色や太さを調整するには近似曲線を選択した状態で右クリックし、[枠線]メニューで編集をします。

数式とR²値を表示する

  • 「グラフに数式を表示する」にチェック
  • 「グラフにR²値を表示する」にもチェック

これで、グラフ上に「点数 = 5×勉強時間 + 55」のような数式と、 「R² = 0.98」などの決定係数が表示されるようになります。
このステップまで完了すれば、回帰分析の基本的なグラフは完成です! 次はこの数式を使って、実際に予測してみましょう。

式を使って予測する

グラフに表示された回帰式を使えば、新しいデータに基づいた予測を簡単に行うことができます。

たとえば、グラフ上に表示された数式が次のようになっていたとします:

点数 = 5 × 勉強時間 + 55

この式を使えば、「勉強時間が6時間だった場合の点数は?」という予測が次のようにできます。

5 × 6 + 55 = 85点

このように、新しいX(説明変数)の値を代入するだけで、Y(目的変数)を計算できるのが回帰式の魅力です。

Excel上でも、次のような式をセルに入力すれば予測結果を自動計算できます:

=5 * A2 + 55

(※A2には勉強時間が入っていると仮定)


実務での活用イメージ

  • 商品の価格を変えたとき、売上がどれくらい変動しそうか?
  • 広告費を増やすと、アクセス数や申し込み件数がどう変わるか?

こうした「予測」や「効果の見込み」を定量的に把握したいとき、回帰分析はとても役立ちます。

また、Excelで簡単に試せるので、プレゼンやレポートで説得力のある資料を作りたいときにも重宝します。

次の章では、より本格的な回帰分析をしたい人向けに、「分析ツールパック」を使った方法をご紹介します。


より本格的に分析したい人へ|分析ツールパックの回帰分析機能

分析ツールの有効化方法

Excelには、回帰分析をはじめとする本格的な統計処理を行える「分析ツールパック」というアドイン機能が搭載されています。

通常は無効になっているため、まずは有効化する必要があります。 以下の手順で簡単に設定できます。


「ファイル」タブをクリック

  • Excelの上部メニューから「ファイル」を選びます

「オプション」→「アドイン」を選択

  • 左下の「オプション」ボタンをクリック
  • サイドメニューで「アドイン」を選びます

「Excelアドイン」を設定して「分析ツール」にチェック

  • 下部の「管理:Excelアドイン」横の「設定」ボタンを押します
  • 表示された一覧の中から「分析ツール」にチェックを入れて「OK」


これで設定完了です。 「データ」タブに新しく「データ分析」というボタンが表示されるようになります。

このボタンから、回帰分析・分散分析・ヒストグラムなどの統計ツールが一覧で使えるようになります。

分析ツールで回帰分析を行う手順

ここでは、Excelの「分析ツールパック」を使って、回帰分析を行う手順を初心者向けにわかりやすくご紹介します。


① 「データ分析」から「回帰分析」を選ぶ

  1. Excelの「データ」タブをクリックします。
  2. 右側にある「データ分析」ボタンを押します。

  3. 表示された一覧から「回帰分析」を選んで[OK]をクリックします。


② 入力範囲を設定する

以下のようなデータを例に説明します:

A列:勉強時間(X) B列:テストの点数(Y)
1 60
2 65
3 72
4 78
5 85

指定する範囲は以下の通りです:

  • 入力Y範囲(目的変数)$B$1:$B$6(点数の列。見出しを含める)
  • 入力X範囲(説明変数)$A$1:$A$6(勉強時間の列)
  • 「ラベル」に☑チェックを入れる(見出しが含まれている場合)


③ 出力先を設定する

出力オプションで「新しいワークシート」または「指定したセル範囲」を選びます。

※初めての方には「新しいワークシート」が見やすくておすすめです。


④ [OK]を押して結果を出力する

回帰分析の結果が表として表示されます。


出力される統計値の見方(初心者向けに)

Excelの分析ツールで回帰分析を行うと、さまざまな統計情報が出力されます。 ここでは、初心者の方にもわかりやすく代表的な指標の意味を解説します。

▼ 回帰統計

指標名 意味
重相関 R 相関係数。XとYの関係の強さを示します。1に近いほど強い関係があります。
重決定 R² 決定係数。予測式がどれだけデータに当てはまっているか(精度)を表します。
補正 R² サンプル数を調整して評価した決定係数。少ないデータのときに参考になります。
標準誤差 予測値のばらつき具合。小さいほど予測が安定していると判断できます。
観測数(Observations) データ件数(サンプル数)です。

▼ 分散分析(ANOVA)

分散分析表では、回帰分析が**統計的に意味のある関係かどうか(有意性)**を確認できます。

指標名 意味
有意 F F検定による有意性の指標。0.05未満であれば統計的に意味があると判断されます。

▼ 回帰係数(予測式のもと)

この表では、実際の回帰式に使う「傾き」と「切片」が出力されます。

指標名 意味
係数(Coef.) 回帰式のパーツとなる数値です。「傾き」や「切片」にあたります。
標準誤差 その係数のばらつき具合を表します。
P値(P-value) その変数が統計的に意味を持つかの指標。0.05未満なら「有意」と判断されます。

▼ 例:回帰式の読み取り方

たとえば、以下のような出力があったとします:

  • 切片:-7.85
  • 傾き:0.15(勉強時間に対応)

この場合、回帰式は次のようになります:

点数 = 0.15 × 勉強時間 - 7.85

→ 「勉強時間が1時間増えると、点数は約0.15点増える」ことを意味します。

このように、Excelの分析ツールを使えば、数式を作るだけでなくその信頼性も含めて判断できるのが大きな魅力です。

散布図だけではわからない深掘りに便利

散布図を使った回帰分析は、視覚的にわかりやすく手軽ですが、 分析ツールパックを使うとさらに詳しい統計情報を得られるというメリットがあります。

特に以下のような場面で分析ツールが役立ちます:


① 説明変数が2つ以上あるとき(重回帰分析)

たとえば「勉強時間」だけでなく「授業出席率」も加味して点数を予測したいとき、 散布図では対応できませんが、分析ツールなら複数の変数をまとめて扱うことができます。


② 統計的に「有意」かどうかを検証したいとき

分析ツールでは「P値(有意確率)」や「標準誤差」といった より高度な指標も出力されます。

  • P値が0.05未満 → 有意な関係があるとされる
  • 標準誤差が小さい → データのばらつきが少なく、予測に安定感がある

③ 分析結果をそのまま報告書に使いたいとき

分析ツールで出力される結果は、Excelの表形式になっているため、 そのままレポートや提案書に貼り付けて使えるのも魅力です。

また、説明変数が複数ある(重回帰分析)場合でも対応可能です。

たとえば以下のように複数の要因(勉強時間・出席率・家庭学習など)で予測したいときでも:

  • X1列:勉強時間
  • X2列:出席率
  • X3列:家庭学習時間

これらをすべて「X範囲」として選択すれば、Excelは自動的に複数の説明変数を使った回帰式を出力してくれます。


散布図だけでもシンプルな分析は可能ですが、 **「より深く知りたい」「精度を重視したい」**というときには、 分析ツールパックの回帰分析機能が非常に便利です。


Excel回帰分析のまとめと注意点

回帰式は万能ではない

回帰分析はとても便利なツールですが、**あくまで「過去の傾向から未来を予測する方法」**であることを忘れてはいけません。

たとえば、以下のような点に注意が必要です:


① 未来の変化には対応できないこともある

過去のデータをもとに作った回帰式は、そのデータの範囲内での予測には強いですが、 外れた状況(たとえば極端な値や別の条件下)では予測の精度が落ちることがあります。


② データに偏りがあると式の信頼性も下がる

たとえば「勉強時間が2時間以下のデータしかない状態」で作った式に、 「8時間勉強した場合」の予測をさせるのは、やや無理があります。

このように、データの範囲や偏りを意識して活用することが大切です。


③ 因果関係があるとは限らない

回帰分析は「数値の関係性(相関)」を見る方法であり、 「○○を増やすと必ず□□になる」といった因果関係を保証するものではないという点にも注意が必要です。


予測式をうまく活用するためには、

  • データの特徴を理解する
  • 外れ値や極端なデータがないか確認する
  • 適切な範囲で予測する

といった意識がとても重要です。

伝えるときはグラフ+補足をセットに

回帰分析の結果を誰かに伝えるときには、グラフと一緒に簡単な補足や解説を添えることが大切です。

たとえば、グラフ上に式やR²が表示されていたとしても、見る人がその意味を理解していなければ、せっかくの分析結果も十分に伝わりません。


① 数式だけでなく、意味をひと言そえる

「点数 = 5 × 勉強時間 + 55」という式が出たら、 → 「勉強時間が1時間増えるごとに、点数が約5点上がると予測される」 といった言葉で説明すると親切です。


② 平均値や信頼区間など、関連する情報も補足

「この範囲に多くのデータがある」「平均はここ」など、 データの背景がわかると説得力が増します。


③ グラフの色やラベルでわかりやすく

線の色を目立たせたり、注釈(テキストボックス)を加えるだけでも、 説明がグッと伝わりやすくなります。


Excelの回帰分析は、「伝え方」次第で大きく印象が変わる分析ツールです。 グラフ・数式・ひとこと解説のセットで、見る人にも理解してもらえる資料に仕上げましょう。

式だけでなく、見せ方や補足で理解が深まります。


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