
Excel 3Dマップとは?
Excelには、通常の棒グラフや円グラフといった2Dのグラフ機能に加えて、「3Dマップ」と呼ばれる立体的な地図グラフを作成できる機能が搭載されています。
3Dマップを使うことで、地理情報を含むデータを地図上に立体的に可視化することができ、地域ごとの数値や傾向を直感的に読み取ることができます。
3Dマップでできること
Excel 3Dマップでは、以下のような可視化が可能です:
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地図上に棒グラフやバブルを立てて、数値の大小を一目で把握
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ヒートマップで、値の大きさに応じた色分け表示
-
時系列データを使って、年月や月別での変化をアニメーション表示
たとえば、「都道府県別の売上データ」や「市区町村ごとの観光客数」「国別のCO2排出量」などを、地図の上でグラフ化できます。
さらに、時間軸を持つデータ(日付・月・年など)を加えると、ボタン1つで再生できるアニメーション表示にも対応しています。
これにより、「月ごとの変化」や「年々の推移」なども視覚的にわかりやすく表現できます。

2Dの塗り分けマップとの違いは?
Excelには、もう一つ「塗り分けマップ(地図グラフ)」という2Dの地図グラフ機能もあります。
塗り分けマップは、都道府県ごとに色を塗り分けて表現するため、値の大きさを色の濃淡で比較するのに向いています。
一方で、3Dマップでは:
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棒グラフやバブルなど複数の視覚表現が可能
-
複数のレイヤーを重ねて、異なる指標を同時に表示できる
-
アニメーション機能で、時系列の推移を再生できる
というように、よりインタラクティブで表現力の高いビジュアル化が可能です。
対応バージョンと利用条件
Excel 3Dマップはすべてのバージョンで使えるわけではなく、対応しているバージョン・環境に制限があります。
使用前には、以下の点を確認しておきましょう。

利用できるExcelのバージョン
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Microsoft 365(旧Office 365)
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Excel 2016 / Excel 2019 / Excel 2021
※これらの**デスクトップ版(インストール版)**に限ります。
使用できないバージョン
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Excel 2013以前のバージョン(「Power Map」という名称での提供も終了済)
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Excel for Web(ブラウザ版)
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モバイル版(スマートフォンやタブレット用アプリ)
補足:インストール済みでもメニューが出ないことがある?
3Dマップは**「挿入」タブ内の「ツアー」グループ**から起動できますが、表示されない場合は以下の原因が考えられます:
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リボンから非表示になっている → カスタマイズで表示可能
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「Microsoft Power Map for Excel」アドインが無効 → アドインの有効化が必要
-
Officeの構成に不具合 → 修復インストールで解決することも
これらの対処法については、記事後半の「表示されない場合のチェックリスト」で詳しく紹介します。
3Dマップの使い方(基本操作)
Excelの3Dマップは、通常のグラフより少しだけ準備が必要ですが、操作そのものはとてもシンプルです。
このセクションでは、3Dマップを作るためのデータの準備と基本的なグラフ作成の手順について解説します。
データ準備と基本構成のポイント
3Dマップを正しく表示するには、Excelに入力する元データの構造がとても重要です。
主に次の3つの情報が揃っていると、スムーズに地図上に可視化できます。
地理情報(都道府県・市区町村など)
3Dマップでは、地図上にグラフを配置するための「場所情報(地理フィールド)」が必要です。
例としては以下のような列を用意します:
-
都道府県名(例:東京都、大阪府)
-
市区町村名(例:京都市、名古屋市)
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国名(例:日本、アメリカ)
Excelはこれらの情報をもとに、自動的に位置を地図上に割り当ててくれます。
数値情報(可視化したいデータ)
地図上に棒グラフやバブルで表示する数値も必要です。
例:
-
売上額(万円)
-
観光客数(人)
-
電力使用量(kWh)
これらの数値をもとに、グラフの高さや大きさが決まります。
日付やカテゴリ情報(必要に応じて)
さらに、**日付(年月・日など)**のデータがあると、時系列での変化をアニメーションで表示できます。
また、分類・部門などの「カテゴリ」列があると、色分け表示にも対応できます。
データ例(簡易)
都道府県 | 売上(万円) | 月 |
---|---|---|
東京都 | 1200 | 2024/01 |
大阪府 | 980 | 2024/01 |
福岡県 | 750 | 2024/01 |
基本グラフの作成手順
データの準備ができたら、いよいよ3Dマップを使ってグラフを作成していきます。
以下の手順で進めてみましょう。
ステップ①:3Dマップの起動
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Excelでデータが入力されたシートを開く
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[挿入]タブをクリック
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「ツアー」グループの中にある【3Dマップ】を選択
-
「3Dマップを開く」をクリック
→ これで、3Dマップ専用のウィンドウが起動します。
※「3Dマップ」が表示されない場合は、記事後半の「表示されないときのチェックリスト」もご参照ください。
ステップ②:地図上にデータを割り当てる
3Dマップの画面が開いたら、右側の「フィールドリスト」から、以下のように各項目を設定します:
-
場所(Location):都道府県など地理情報の列
-
値(Value):売上など可視化したい数値
-
時間(Time)(任意):月・日付などの列
これだけで、地図上にグラフが表示されます!
ステップ③:グラフの種類を選ぶ
グラフの種類は以下の3つが主に使われます:
グラフの種類 | 特徴 |
---|---|
棒グラフ | 高さで数値の大小を表現。もっとも直感的 |
バブル | 大きさで表現。2つ目の数値やカテゴリに最適 |
ヒートマップ | 色の濃淡で表現。面積や密度の可視化に便利 |
画面右上の「レイヤーオプション」から、いつでも種類を切り替えられます。
ステップ④:アニメーション表示を設定する(時系列)
「月」や「日付」の列がある場合は、それを「時間」フィールドに指定すると、下部に再生バー(タイムライン)が表示されます。
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再生ボタンを押すと、時間の経過に合わせてグラフが変化するアニメーション表示に!
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スピードや単位(年/月/日)もカスタマイズ可能です。
補足Tips
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グラフの色・大きさ・不透明度なども自由にカスタマイズ可能
-
複数レイヤーを使えば、人口と気温を同時に表示なども可能です(後述)
以上が、3Dマップを使って基本的なグラフを作成する手順です。
次のセクションでは、具体的な活用事例をご紹介していきます。
活用事例でわかる!3Dマップの活かし方
Excelの3Dマップは、データを地図上に視覚的に表現できるため、実務・教育・分析のさまざまな現場で活用できます。
ここでは、具体的なユースケースを4つに分けてご紹介します。
教育・学習:人口・面積・気温の比較
社会や地理の授業で活用される「都道府県ごとの統計データ」も、3Dマップを使うとぐっと視覚的に理解しやすくなります。
たとえば以下のようなデータを重ねて表示すると…
都道府県 | 人口(万人) | 面積(km²) | 平均気温(℃) |
---|---|---|---|
東京都 | 1390 | 2190 | 16.3 |
北海道 | 520 | 83400 | 8.9 |
レイヤー構成の例:
-
レイヤー1:人口 → 棒グラフ(高さで表現)
-
レイヤー2:気温 → バブル(大きさで表現)
-
レイヤー3:面積 → ヒートマップ(色で表現)
これにより、「人口は多いけど面積は狭い」「寒い地域はどこ?」といった相関が一目でわかるようになります。
複数の指標を重ねて比較できるのは、3Dマップならではの強みです。
ビジネス:売上・来店数を分析
店舗ごとの売上や来店数など、拠点別の業績データを地域ごとに分析したいときにも、3Dマップは非常に有効です。
店舗名 | 都道府県 | 売上(万円) | 来店数(人) |
---|---|---|---|
東京本店 | 東京都 | 1200 | 4300 |
レイヤー構成の例:
-
レイヤー1:売上 → 棒グラフ
-
レイヤー2:来店数 → バブル
こうすることで、「来店数は多いけど売上が伸びない支店」など、複数の視点から業績を分析することができます。
地理情報と数値が合わさることで、営業戦略やマーケティング分析にもつながります。
観光・行政:月別の観光客数推移
観光地や都市の「月ごとの観光客数」など、時間の変化を含むデータも3Dマップでは得意とする分野です。
都市名 | 月 | 観光客数(人) |
---|---|---|
京都 | 2024/04 | 900,000 |
京都 | 2024/05 | 1,200,000 |
設定のポイント:
-
「月」列を時間フィールドに指定
-
棒グラフを使い、「月ごと」に再生アニメーションを表示
これにより、春〜夏にかけて観光客数がどう増減したかを、地図上で“動き”として表現できます。
季節変動・キャンペーン効果の可視化にも活用できます。
医療・環境:地域別エネルギー使用量
地域ごとの電力使用量やCO₂排出量など、「分布を視覚化したい」データには、ヒートマップ表示がぴったりです。
都道府県 | 電力使用量(MWh) |
---|---|
東京都 | 120,000 |
北海道 | 56,000 |
グラフ設定:
-
ヒートマップ形式を選択
-
値の大小に応じて、色の濃淡を使って分布を表示
使用量が多い地域を一目で把握できるため、地域ごとの課題や傾向を分析する材料になります。
エネルギー政策や再エネ普及の指標づくりにも役立ちます。
このように、3Dマップは業種や目的を問わず、「地理×データ」を直感的に表現できるツールとして活用できます。
次のセクションでは、これらのグラフをより見やすくするための「設定テクニック」をご紹介します。
レイヤー機能と見やすくするための設定テクニック
Excelの3Dマップでは、「レイヤー」という機能を使って複数のグラフを重ねて表示することができます。
このセクションでは、レイヤー機能を使うメリットと、実際に見やすく表現するための設定テクニックを詳しくご紹介します。
複数レイヤーを使うメリットとは?
3Dマップでは、データごとに個別のレイヤー(階層)を作成して重ねて表示することができます。
この機能を活用することで、1つの地図上に複数の情報を表現できるようになるのが最大のポイントです。
たとえば…
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人口を棒グラフで表示
-
気温をバブルで表示
-
面積をヒートマップで表示
というように、異なる視点のデータを同時に可視化できるようになります。
また、各レイヤーはそれぞれ次のようなカスタマイズが可能です:
-
グラフの種類(棒・バブル・ヒートなど)
-
色の設定
-
表示・非表示の切り替え
-
順序の入れ替え
表示切り替えもできるので、視点を絞って比較したいときにも便利です。
おすすめのレイヤー構成パターン
目的に応じて、どのようにレイヤーを構成するかで見やすさや伝わりやすさが大きく変わります。
以下に代表的な構成例をご紹介します。
教育向け:棒グラフ+バブル+ヒートマップ
レイヤー | 内容 | 表現方法 |
---|---|---|
レイヤー1 | 人口 | 棒グラフ |
レイヤー2 | 気温 | バブル |
レイヤー3 | 面積 | ヒートマップ |
→ 地域ごとの特徴を立体的に比較可能。「広いが人が少ない」などがすぐに分かります。
ビジネス向け:棒グラフ+バブル
レイヤー | 内容 | 表現方法 |
---|---|---|
レイヤー1 | 売上 | 棒グラフ |
レイヤー2 | 来店数 | バブル |
→ 店舗ごとのバランスや成果の傾向を視覚的に把握できます。
「来店数は多いが売上が伸びていない」などの分析に最適です。
その他の例:
-
環境分野:ヒートマップ単独でCO2排出量を表示
-
観光分析:棒グラフ(観光客数)+時間軸アニメーション
-
マーケティング:SNS反応数(バブル)+地域(ヒート)など
目的や伝えたい情報によって、レイヤーの種類や数を調整して構成するのがポイントです。
表示バランスの調整方法
複数のレイヤーを同時に表示すると、グラフが重なって見えにくくなることがあります。
ここでは、見やすさを保つための設定テクニックをご紹介します。
レイヤーの順序を工夫する
3Dマップでは、上のレイヤーが前面に表示される仕様になっています。
棒グラフやバブルがヒートマップを隠してしまわないように、以下の順序を意識しましょう。
おすすめの順序:
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最下層:ヒートマップ(面積・使用量などの背景情報)
-
中間層:バブル(注目要素の大きさ)
-
最上層:棒グラフ(主な比較対象)
※レイヤーの順序は、レイヤーリストのタイトルバーをドラッグして入れ替えます。
バブルサイズ・棒グラフの透明度を調整する
-
バブルが大きすぎると他の情報を隠してしまうため、小〜中程度に調整
-
**棒グラフの不透明度(透過性)**を50〜70%程度に設定すると、下のヒートマップが透けて見えるようになります
設定方法は、各レイヤーの「レイヤーオプション」から変更できます。
色や地図スタイルの工夫
-
データの意味に合わせて色を直感的に伝わるものに設定(例:暑い=赤、寒い=青)
-
地図背景のスタイルを「濃い地図」「淡い地図」などに切り替えることで、グラフとのコントラストを強調できます
実際にやってみた調整例(参考)
調整項目 | 設定例 |
---|---|
バブルサイズ | 20〜30%(小さめ) |
棒グラフの透過度 | 60% |
色の設定 | 売上=青系、来店数=オレンジ系 |
地図スタイル | 淡色(背景の情報を抑える) |
複数レイヤーの調整には少し試行錯誤が必要ですが、一度設定がハマると非常に伝わるグラフが完成します。
次のセクションでは、3Dマップがうまく表示されないときのトラブル対処法を紹介します。
3Dマップが表示されない・使えないときのチェックリスト
Excelの3Dマップは便利な機能ですが、**使用環境や設定によっては「メニューが出ない」「地図が表示されない」**といったトラブルが発生することがあります。
ここでは、よくある表示トラブルとその対処法を一覧表形式でご紹介します。
うまく表示されないときは、以下のポイントを順番に確認してみてください。
メニューが表示されないときの確認ポイント
3Dマップは通常、[挿入]タブの「ツアー」グループ内に表示されますが、Excelの設定やアドインの状態により非表示になっている場合があります。
チェックすべきポイント:
-
Excelのバージョンは対応しているか?
(対応:Microsoft 365 / Excel 2016 以降のインストール版) -
「ツアー」グループがリボンに表示されているか?
→ 非表示なら[ファイル] → [オプション] → [リボンのユーザー設定]で追加可能
-
COMアドイン「Microsoft Power Map for Excel」が有効か?
→ [アドイン] → [COMアドイン] → チェックが入っているか確認
地図やグラフが表示されないときの原因と対策
3Dマップが起動しても地図やグラフが出ない場合、データや環境設定に原因がある可能性があります。
主な確認ポイント:
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地理情報(都道府県・市区町村)が入力されているか?
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表記に揺れやミスがないか?(例:「京都」ではなく「京都府」)
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インターネット接続があるか?(地図表示には接続が必要な場合があります)
-
Excelの[詳細設定]にある「グラフィックハードウェアアクセラレーション」が有効か?
Officeの修復・管理者設定の見直し
それでも解決しない場合は、ExcelやOfficeそのものに不具合が起きているケースや、会社・学校などのアカウントによる制限の可能性も考えられます。
対処方法:
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「コントロールパネル」→「アプリと機能」→ Office を選択 →「変更」→「クイック修復」または「オンライン修復」を試す
-
企業や学校で使用しているPCでは、IT管理者に3Dマップ(Power Map)機能が無効化されていないか確認
表で見やすくチェック!
以下に、表示トラブル時のチェックリストとその対処方法を表形式でまとめました。
チェック項目 | 確認ポイント・対処法 |
---|---|
1. Excelのバージョン | Excel 2016以降 または Microsoft 365 を使用していますか? Excel 2013以前・Web版・スマホ版では使用できません。 |
2. 「3Dマップ」ボタンの表示 | 「挿入」タブに「3Dマップ」ボタンが表示されていますか? グレーアウトしている場合は、データ形式に問題があるかもしれません。 |
3. 地理情報の有無 | 都道府県・市区町村・緯度経度などの位置情報がデータに含まれていますか? 地名が曖昧だと地図に表示されません。 |
4. 表の構造 | 結合セルや空白行・空白列はありませんか? 表の構造が崩れていると、読み込みエラーになる場合があります。 |
5. グラフィック設定 | Excelの「オプション」→「詳細設定」→「ハードウェア グラフィック アクセラレータを無効にする」にチェックを入れてみましょう。 |
6. メモリ・PC環境 | 他のアプリを閉じてPCの負荷を減らしましょう。 ExcelやPCを再起動すると改善することもあります。 |
7. Officeの不具合 | 「コントロールパネル」→「アプリと機能」からMicrosoft Officeを修復してみましょう。 |
表はご覧のとおり:
-
上から順に確認していけば、多くのケースで解決に繋がります
-
読者のトラブル時の検索ニーズにもしっかり対応できます
このように、「うまく表示されない」という悩みも、いくつかのステップで確実に解決できます。
次のセクションでは、記事のまとめとして3Dマップ活用のポイントを振り返ります。
まとめ:3Dマップで “魅せる可視化” を実現しよう
Excelの3Dマップは、通常のグラフでは表現しにくい「地理×データ×変化」を、直感的かつ立体的に伝えることができる非常に魅力的な機能です。
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棒グラフやバブルで地域の特徴を強調
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ヒートマップで分布を色で示す
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時間軸を加えれば、アニメーションで「推移」を表現
このように、見る人の印象に残る“動き”と“広がり”のあるビジュアルを簡単に作ることができます。
また、この記事では以下のようなポイントについてご紹介しました。
活用の幅広さ
教育現場での統計比較から、ビジネスの売上分析、観光や環境分野での地域データの活用まで、3Dマップはさまざまな場面で活躍します。
表示を工夫して“伝わる”グラフに
レイヤー機能を使いこなすことで、複数の情報を同時に表示しながらも、見やすく整ったグラフを作成できます。
サイズや不透明度、順序を調整するだけで、視覚的な印象が大きく変わることもポイントです。
トラブル時も落ち着いて確認
「メニューが出ない」「グラフが表示されない」などのトラブルも、チェックリストに沿って順に確認すればほとんど解決可能です。
使える環境や設定さえ整えば、誰でもすぐに3Dマップを活用できます。
ぜひ、あなたのデータを “地図で魅せる” 体験を!
数値やテキストだけでは伝わりづらい情報も、3Dマップを使えば「見た瞬間に伝わる」表現に変わります。
この記事を参考に、ぜひご自身のデータで実践してみてください!
読者の方の「なるほど!わかりやすい!」につながる、そんなグラフ作りのお役に立てば幸いです。